第28回 消費税と家賃のお話 その3

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このお題、約半年前の年末年始に2回に分けてお話させていただきました。
“その1”では、消費税の基本的仕組みについて、“その2”では、なぜ消費税が必要だったかについて、でした。

今回3回目として、“大家と消費税の関係”についてお話させていただきます。

“その1”で、消費税は最終消費者が税負担をし、製造業者や流通業者、いわゆる“事業者”は、原則税負担をしない、と説明しました。

家賃についても、消費税導入当時=消費税課税の時代は全く同じでした。ところが、3年後に“非課税”になった時から、大きな問題が発生しました。

事業者は、基本、仕入れの時に消費税を支払い(預け)、売上の時に消費税を受け取り(預かり)ます。そして、その差額を納税します。

我々大家も、例えば建物を建てる時には、本体価格の10%を“預けて”いますし、修繕費や電気代、管理費用などの支払いにはすべて10%の消費税を“預けて”おります。

ところが家賃は非課税ですから、入居者様から家賃の10%を“預かる”ことが出来ません。

結果、家賃の消費税(ゼロ)-仕入れ時の消費税=常にマイナス となります。

実際の数字で見てみます。

消費税導入前、家賃が10万円、経費(管理費、仲介手数料、修繕費、光熱費等)を4万円とすると、“営業利益=6万円”となります。

もし、家賃が非課税でなければ、(10万円+1万円)―(4万円+0.4万円)―0.6万円(納税)=6万円となります。つまり、消費税が無くても、税率が10%でも、事業者の営業利益は変わらない、ということです。

ところが、家賃は実際には非課税、1万円を預かることは出来ません。当然納税もしませんので、“上記の算数”は以下のようになります。

10万円―(4万円+0.4万円)=5.6万円<6万円 (0.4万円の減少)

つまり、仕入れ=経費に掛かる消費税分、収益が悪化したことになります。大家以外の事業者は、消費税率に関係なく、6万円の収益を確保できるのに、大家はそれが出来ない

という状況にあります。

急激な円安と、ウクライナ情勢によるエネルギーの高騰、それによる物価高に、ほとんどの国民が危機感を持っております。

幸い、今年の春闘では大幅な賃金アップがなされました。しかしながら、その流れが中小企業や、一般の小売業の方々まで波及するかは予断を許さない状況です。

我々大家は、“中小企業”どころか、そのほとんどが“家内制零細事業者”です。実需に基づかない賃貸住宅の過剰供給である現状、家賃の値上げなど全く不可能です。

とはいいつつ、ここまでは事業者自ら解決すべき問題ではあります。

更にこの先10年単位で見た場合、消費税が15%、20%になるのは、ほぼ確実で、その度に、我々大家の収益は下がります。

もちろん、国に対して“我々大家の窮状を救ってくれ”などと言う積りはありません。そもそも、この問題に気が付いている大家は殆どいませんし、国は非課税の問題には過去30年以上、全くの無関心ですから。

私の懸念は、このまま消費税が増税されると、真面な経営が出来る大家がいなくなってしまうとこと。人が住まう住宅ですから、日常の修繕費や、より快適にお住まい頂くための投資、それが出来なくなることは間違いないです。

今、我々の周りから、“街中華”がどんどん減っております。街中華ならずも、“シャッター街の小売店”は、後継者がおらず、高齢の親世代は、新たな投資も出来ず、“この世代限り”の経営をしております。

残念ながら、“個人経営である賃貸業”も、消費税がこのまま増税されると、どんなに努力をしても、経営は成り立ちません。

そうなると、良質でリーズナブルな家賃の賃貸物件が供給されなくなり、最終的に困るのは、部屋探しをする一般国民ということになります。

少なくとも、国はこの問題を注視し、必要な措置を取ることが、多くの国民の住居確保という観点から必要である、と私は考えております。