前回は、サブリースの仕組みとそれを悪用した問題点を挙げました。
社会問題とはなりましたが、サブリースという仕組みそのものが問題なのではなく、契約の当事者である地主や投資家が、契約内容を理解せず安易に契約したことが問題の一因と見なされました。
そこでサブリースというスキームにおいて、その仕組みを熟知する”サブリース事業者=主にハウスメーカー”に対し、マスターリース契約を結ぶに当たって、契約の相手に”重要事項説明を行う”という義務を負わせることになりました。
また、誇大広告や不当な勧誘の禁止といった行為をサブリース事業者に、厳に慎むことが、”サブリース新法”に盛り込まれました。
正直、一大家として”サブリース新法”の内容を知ったときには、不快感を感じました、なぜなら、我々大家をまるで”ど素人”のように扱った内容だったからです。
しかし、社会問題を起こした地主は、文字通り”ど素人”だったのですから、ある意味仕方がありません。
サブリース事業とは賃貸に特化したサブリース事業者のマーケティング戦略で、契約相手である地主・投資家に十分な説明をせず建物および土地を売却した為、社会問題になった、とお伝えしましたが、この5年程で新たな”サブリース事業”が出てきました。
それは”転貸型社宅代行”という業態です。
”社宅代行”とは、転勤族の社宅業務をアウトソーシングする事業です。それには2つの形態があり、単に事務代行をする場合と、大家から賃貸を借り受け、それを法人に転貸する場合です。後者を”転貸型社宅代行”といいます。
サブリース新法が施行されたのが2020年末で、転貸型社宅代行が一般的になったのもこの時期です。ですので、転貸型社宅代行がサブリース新法の対象となるのか、ネットを見る限りでははっきりしませんでした。
そこで、監督官庁である国交省に直接電話し、確認した内容が以下の通りです。
そもそも、サブリース新法はハウスメーカー等が自社製品(賃貸物件)を売らんがために、サブリースという仕組みを”悪用”した・・・本来大家が知るべきリスクを伝えなかったため、社会問題になったもので、それを是正するのがサブリース新法。ところが、転貸型社宅代行の事業には建物の売買など関わらないため、サブリース新法で是正しようとする問題が発生する余地がないのです。それでも、国交省は、”転貸型社宅代行事業にも、重要事項説明を義務付ける”というのが今の実態です。
私も還暦を過ぎ、”すべての法令が万全である!”などとは全く思いませんが、法律の骨子を作った国交省の担当の役人がどれだけ賃貸の実情を知らずに、行政を行っているか?を知るにあたり、”これでは、日本の賃貸市場・賃貸を取り巻く諸問題が解決される訳がない”を感じてしまいました。
政治家も行政も”大家は富裕層だから、それを守る法令改正など必要ない”と思っているのでしょう。
確かに大家の中には”富裕層”と言われる人もいるでしょうが、それは”政治屋”も同じこと、国からの歳費だけが収入源の方もいるし、億単位の収入がある政治屋もいる。
ただ、大家の権利を著しく制限した終戦直後の法令を未来永劫守り続けていけば、間違いなく大家は疲弊し、結果、入居者様の賃貸環境が悪化することになります。
そろそろ、その辺に気が付く政治家が出てきてもいいころ合いだとは思うのですが・・・・
画像は国交省のHPから